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(愛知)栄・風俗店の「カラス」

女性追いかけ 強引勧誘


しつこく女性に声をかけるカラスの男(13日午後6時、名古屋市中区で)

 名古屋市中区栄の繁華街で、通行中の女性に、風俗店で働くよう強引な勧誘をする男たちがいる。黒いスーツを身にまとっていることから、「カラス」と呼ばれる。しつこくつきまとい、時には女性に罵声(ばせい)を浴びせたり、追いかけたりすることもあるという。全国では札幌市がススキノ条例を制定して、排除に乗り出している。名古屋では制定に向けた動きはなく、県警や商店会などが女性を対象に啓発活動を始めたところだ。(天野雄介)

■不透明な組織

 「すいません、ちょっといいですか」。名古屋市の女性(20)は先月下旬、栄の地下街を歩いていて、若い男に声をかけられた。立ち止まって話し始めると、男は世間話の後、唐突に切り出した。「1日3万円出すから、うちの(風俗)店で働かない」。女性は断ったが、執拗(しつよう)につきまとわれ、腕をつかまれた。

 カラスは若い女性に声をかけては、風俗店へ勧誘するスカウトマンだ。歩合制で、紹介する人数によって一定の報酬を得るという。県警ではその一部が暴力団に手数料として納められているとみているが、組織の実態は不透明だ。

 栄にカラスが目立ち始めたのは、2003年ごろから。県警や商店会への苦情は後を絶たず、中署は今年に入って、これまでに14人を摘発した。

■1万円未満の科料

 ただ、現実的にカラスを取り締まるのは軽犯罪法違反しかなく、罰則は1万円未満の科料か、30日未満の拘留だけ。5月に改正された風営法でも勧誘行為の禁止は明文化されておらず、摘発されてもすぐに路上に舞い戻れる。

 同様の悩みを抱えていた札幌市は昨年12月、路上での風俗店へのスカウト行為などを禁止するススキノ条例を施行した。それまで約100人いたとみられたカラスは、10人ほどに減った。

 札幌での効果を知った名古屋地下商店会連合会は今年2月、名古屋市に対してカラス対策の要望書を提出した。しかし、名古屋市は「野放しにしていいわけではないが、警察、地域と協力し、啓発活動などをしても効果が上がらない場合に検討したい」と、制定に向けた動きはまだない。

■啓発活動に活路

 県警は今年に入り、繁華街での犯罪抑止を目指して、「歓楽街総合対策本部」を設置した。栄は重点地区に指定され、深夜から未明にかけての犯罪取り締まり強化のために専従捜査班も投入された。捜査班はカラスの取り締まりにもあたる。

 中署の水野正樹生活安全課長は「カラスの摘発と合わせて、雇う店側の指導にも力を入れていく。地域や行政と連携し、根気よく対応していく必要がある」と力を込める。

 5月末、同署の呼びかけに応えて商店会や飲食業者らが、女性に注意を呼びかけるキャンペーンを行った。カラスを対象にしたのは初めてだった。

 名古屋飲食協同組合の林三芳常務理事は「厳しい罰則のある条例がない現状では、女性がカラスを無視し、話を聞かないことが、何よりも大切。勧誘に応じる女性がいるからカラスも現れる。いろいろな団体と連携して啓発活動に力を入れていくしかない」と話す。

◇ ◇ ◇

 ススキノ条例 正式名称は「札幌市公衆に著しく迷惑をかける風俗営業等に係る勧誘行為等の防止に関する条例」。昨年12月に施行された。風俗店へのスカウトや、客引きの禁止が規定され、違反者には50万円以下の罰金などとなり、違反常習者には6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。
 条例で禁止されている主なものは次の通り。
▽スカウト行為 性風俗店のほか、居酒屋やスナックなども含む
▽客引き 性的サービスをする店への誘引
▽広告物 公衆の見える場所にひわいな看板など広告物の掲示

2006年6月14日  読売新聞)
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